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干草の山から針を見つけるようなもの

2018-12-23 12:53:44

警察は、どうやってドローンの操縦者を見つけるつもりなのだろうか?

Gatwick disruption: How will police catch the drone menace?

イギリスの空港がドローンの侵入によって閉鎖され、多くの利用客に影響が出たという話は、今日になって容疑者が逮捕されたと報道されている。ドローンについても、こういう事件が起きると増えるであろう色々な規制や法律について、更に制度の不備をついて(あるいは規制があっても無知な人間はたくさんいる)「クリエーティブ」な「イノベーション」を叫ぶバカが世界中で色々な「ローンチ・ファースト」な事件を引き起こす人々が出てきては、当然のように既存の制度で処罰されるのだろう。そしてこのような経緯が繰り返されて多くの規制が出来上がってゆくようすを、無責任な業界ジャーナリストやリバタリアン系の学者は「自由の危機」だと騒ぎ、昨日も書いたように社会科学的に無知な技術者や IT 業界の大立者たちと共に、実際には別の人権侵害を引き起こしかねない事業展開の放埓を「自由」の名によって覆い隠すレトリックを囃し立てる。結局、その先にあるのは事業活動の自立的な(そして、個々の事業者を越えた市場全体としては誰も責任を取れなくなる)展開でしかないのがグローバリズムの本質であるのは、おおよそ「動態」あるいは「歴史」という概念を考慮している社会科学の素養があれば学部生でも理解できる筈だが、このていどの知見すら無視して「自由」とか「クリエーティブ」とか「経済発展」などという、もちろん大切な価値だと言える状況もあるが、大半の状況ではタワゴトとしか言いようがない言葉なり観念のためだけに、人々は自分たち自身の人権すら軽視する結果を直視しようとしない。

ドローンによる規制区域内への侵入という事象にどう対応するかは、寧ろ簡単である。区域の外へ追い出すか、破壊すればいい。違法に侵入した器物がどういう影響を及ぼすか分からない場合は、その区域や不動産の管理者は無条件に破壊する権利がある。これは日本でも同様だ。自分の自宅の庭に、どこからやってきたのかわからない犬がいた場合は、無条件に何らかの方法で追い払っていいし(日本の法律において犬は「器物」であるから、要するに他人の庭にゴミを捨てられた場合と同じである)、場合によっては不動産の法的な管理者の権限において殺傷するべきである。なぜなら、その犬が狂犬病の予防注射を処置されている保証はないからだ(再びゴミ袋の例で言えば、袋の中に腐敗したものや危険物が入っている可能性があるからだ)。しかし、そもそも入ってくること自体による対応コスト(今回のイギリスの空港で費やされたような大きなコストもそうだ)を考えると、やはり事前に抑制することが望ましい。スパイ活動やテロについては、安全保障上の国際的な取り決めなり国家間の条約なりで一定の牽制は図れる。そして、これから各国でも更に規制が強化されるかもしれないが、住民や観光客や企業による勝手なドローンの飛行を抑制するためには、住民ですら自分が住んでいる土地の法令や条例など殆ど知らないし関心がないのだから、ましてや観光客に訪問先の法律や条令を学べと言ったところで、昔から「旅の恥はかき捨て」などというフレーズを自分勝手に解釈する連中が絶えない状況においては(もともとは、旅先で傲慢かつ無思慮なふるまいをしてもいいなどという意味ではない。初めて行く土地のことは知らないことが多いだろうから、失敗するのは仕方ないとしても慎重に行動せよという意味だ)、受け入れる側があらかじめ対策しておかなければ、現実にはドローンの侵入は防げない。

そこで、上記の記事では幾つかの対策が提案されているのだが、まずジャミングは空港や港などでは逆に本来の業務に悪影響が出ると思うので推奨できない。軍事用途では自明のことだが、ジャミングは妨害するべき周波数が明確に分かっていればいいが、探知して確定するまでの時間やコストをかける余裕がない場合は、実用的な範囲の周波数を一斉に撹乱するような強い電波を放出する方が効果的だ。そして、そんなことを闇雲に空港でやれば管制システムも混乱するのは当たり前である。それから、対ドローンのレーザー装置を設置したり、スナイパーを配置する予算を確保するべきかどうかも議論の余地が大きいし、オランダでは鷹を使っているらしいが、これも費用がかさむようだ。

そして、僕が効果的な対策の実装が難しいと思っている理由の一つは、これらの対策はドローンが管理区域内へ侵入した後にしかできない対策かもしれないということだ。仮にジャミング電波を発生させると、区域の外まで妨害電波が届くことによる影響にまで責任をもたなくてはいけなくなる。そして、スナイパーだろうと鷹だろうと、管理区域へ侵入する手前の場所で撃墜したら、周囲のどこへ墜落するか分からない。それこそ周辺地域の民家にでも墜落すれば、逆に空港が訴えられる恐れもある。かといって、侵入した後に撃墜しても、滑走路へ墜落すれば後始末で飛行機が飛ばせなくなるという影響が出てしまう。

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